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大変革期に未来を語る! いま、メディアが面白い

2014年10月8日(水)虎ノ門ヒルズフォーラム

朝日新聞、NHK、文藝春秋、日経BP、ダイヤモンド、扶桑社、KADOKAWA――。同じメディア業界でガチンコのライバルでもあり、時には仲間でもある。そんな人たちがざっと300人。この場にいる。そのことにちょっとゾクッとした。

10月8日夜。東京・虎ノ門の新名所「虎ノ門ヒルズ」。その5Fにあるホールでイベントが開かれた。表題は「大変革期に未来を語る!いま、メディアが面白い」。主催はわが社、東洋経済新報社である。

「メディアとコンテンツの未来像について考える」。これが趣旨だ。日本のメディア業界を席巻中のスマートニュースやグノシー、ザ・ハフィントンポスト、ニコニコ動画、Huluなどのキーマンを集めた2部にわたるパネルセッションを展開。基調講演でKADOKAWA会長の角川歴彦氏をお呼びして、全部で3時間を超える内容だった。

有料イベントで用意した定員300人の枠は事前に完売。当日受け付けでも20人近くが訪れた。来場者はいわゆる「既存メディア」「オールドメディア」などと呼ばれる新聞、出版、テレビなどの同業他社の人たちが中心だった。広告代理店向けのメディア発表会などを除いて、東洋経済がみずからの主催で一般に広く参加者を募ったイベントは、今回が初めて。にもかかわらず、東洋経済の呼びかけに対して、名だたるメディアの関係者がおカネを払ってまで集まってくれた。イベント開催後の感想も「有意義だった」「面白かった」などの高評価を寄せてくれた。イベント内容を記事にしてくれたメディアもあった。

もちろん、東洋経済という会社に対する信頼や期待が根幹にあるのだと思う。しかし、筆者が「ゾクッとした」のには理由がある。

関係者の1人としてイベントの裏側を少し紹介しよう。実はこれを企画・運営したのは40代でそれなりに責任のあるポストの人材でもなければ、30代で働き盛りの中堅でもない。まだ20代の若手女性たちがキーマンとなって、おじさんたちを引っ張ったのだ。今の社会情勢を映し出すような出来事でもある。名前だけ紹介させてもらうと、入社7年目の河村麻里子、3年目の中野華衣の2人である。

ジャーナリズムは混沌とし、紙の出版物市場は右肩下がり。既存大手系も含めたネットメディアの発展も加わり、スマートフォンがあれば時間や場所を選ばずに情報を取得でき、その情報をさらにソーシャルネットワークでシェアして離れた人同士でも口コミのように広がっていく、という流れがどんどん進んでいる。出版社にしてみると、書籍はともかく雑誌の市場環境はとくに厳しい。

東洋経済もご他聞に漏れず、その渦のまっただ中にいる。『週刊東洋経済』『会社四季報』を中心としてきた雑誌出版社として2015年に創業120周年を迎えるが、今までのビジネスモデルだけでこの先、生き延びていけないのはもはや明白。だから、既存媒体を新しい時代に合わせて変革・強化していくのはもちろんのことながら、『東洋経済オンライン』をはじめとする新しいビジネスにも挑んでいる。

ただ、それも明確なゴールに向かってやっていることではない。東洋経済自身も悩んでいるし、答えは出ていない。「それは業界他社も同じ。だったら自分たちが課題として捉えていることをそのままコンテンツ化して、自らも考え、走りながら伝えていく。自分たちの社内と業界全体を盛り上げられないか」。そんな河村の発想がイベントの出発点になった。

イベントの運営面を取り仕切った中野は振り返る。「集客に不安もあったが、実際には想定をはるかに超えて集まった。3年目の若い自分が『こんな仕事をやっていいんだ』と思った。スピード感があった。やればできちゃうんだと」。

20代の若手女性が主導する初めての企画。ゴーサインを出したのは執行役員デジタルメディア局長の田中大雅である。「東洋経済というブランドを浸透・波及させていくためにイベントは有効な手段。自ら手を挙げて『やりたい』と言ってきた若い人にやってもらったほうがいいと思った。逆に自分自身が『やれ』と言われてもできない」。

「イノベーション」とは革新と訳され、新興企業の人たちは特に好んで使っている。派手なイメージがあるが、実際はもっと地味でちょっとした変化こそが本当のイノベーションなのかもしれない。それを積み重ねることで、本当の「革新」が起きるのではないか。筆者は思っている。

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編集後記

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東洋経済オンライン編集部

武政秀明(たけまさ ひであき)

今回、出版物やオンラインという媒体をフックにして、リアルなイベントを仕掛けられた。まだ一つの「点」にすぎないかもしれないが、つなげれば「線」や「面」に広げていける。筆者は38歳。20代の自分を思い出すと大した仕事はやってなかった。大げさだし、手前味噌なことは百も承知だが、若手女性への頼もしさを感じるとともに、東洋経済の新しい可能性を見た気がした。

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