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ROLE

何度も見たくなる、情熱の業界地図。

『週刊東洋経済』編集部 『会社四季報 業界地図』編集長 西澤佑介

今、仕事は面白いですか?

もちろんです。僕が思うに、つまらない仕事は仕事じゃない。仕事とは面白いものであるべきで、つまらないなら工夫して面白くするべきで、それができる環境になかったら僕はこの会社にはいません(笑)。編集者・記者の仕事は恐ろしくハードワークで心身を消耗するもの。もし単純作業を“回すだけ”のやりがいのないものだったら、とてもやってはいられませんよ。

『業界地図』の編集をやっている間も、深夜帰宅の毎日で、平日はシャワーしか浴びられない日が2カ月続くんですから。そんななかでも、仕事を面白いと思い続けられるかどうか、仕事を面白くしようとするエネルギーを持ち続けていられるかどうかが、ポイントだと思います。入社以来、僕はずっとそう思ってやってきました。

西澤さんにとって、面白い仕事って何?

誰も見たことのない、新しいものを提示できるかどうか、ですね。『業界地図』もデータの塊で、数字チェックを7回も8回もやるような、いわば写経のような仕事ですが、読者がこの本を手にして、今までにないものを見て衝撃を受けている絵を想像できるから、面白いと思えるんです。

僕は今年で編集長2年目になったんですが、今年度版では、今まで僕がやりたいと思っていたこと、そのすべてを盛り込みました。たとえば、今回初めて取り上げた「宗教法人(新宗教)」業界。これも1年目の編集長のときに思いついていたものなんですが、「すげえ面白い! でもヤバい、出したらどうなるかわからない問題作かも……でもゼッタイやりたい!!」と1年間温めてきてようやく実現したものなんです。

他にも、芸能プロダクションとか、投資ファンドだとか、ファッションブランドとか、ニュースや広告で名前はよく聞くけど、あまり知られていない業界を積極的に取り上げている。これも読者にとって「別の視点で、自分が生きている社会をとらえる面白さ」を追求したつもりです。

編集長になられたのは、どういう経緯だったんですか。

それについては、面白い話があるんですよ! 実は僕、自分が編集長になるって知ったとき、ちょうど休暇中でパリにいたんです。

アンニュイな平日の午前中、ホテルの一室で、これからルーブル美術館でも行こうかなあと、ぼんやり考えながらチーズとナッツをつまんでいました。そうしながらふと、たまには会社のメールをチェックするかと思ってPCを開いたら、上司から編集長打診のメールが入っていたんです。「えっー!?」って、思わずのけぞってしまいましたよ。

だって僕、それまで7、8年、記者の仕事だけしかやってきてなくて、編集の仕事についてもほとんど知らなかったのに、いきなり編集長かよ!って感じで……。「整理部」って何?「台割」って何?っていうレベルだったんですから。

本当に「台割」も知らなかったんですか?(笑)

ほんとですよ、「折」だって知りませんでした。当時の前任者から聞いた「折とは16の倍数であること」というメモが今でも手元に残ってます(笑)。編集の仕事の初歩すら知らないまっさらな状態から編集長になったんで、怒涛の日々でした。でも、そんなショック療法みたいなやり方だったからこそ、僕は、編集長の仕事を真芯でとらえることができたんじゃんないかなと今は思います。

僕は、編集長はリーダーではない、むしろサービスマンだと思うんです。編集長は決して主役じゃなく、チーム全体をコーディネートする仕事ではないかと『業界地図』を通じて強く感じました。

紙の見積もりから制作進行、デザイン、書店への販促やコンテンツの質のチェック、そして収益管理という、すべての行程を束ねて商品に責任を持つのが編集長です。そのためには、デザイナー、営業、記者、編集部員と、関わっているすべての人たちのモチベーションを維持するために、時には頭を下げたり、お菓子を差し入れたりと、いいものが作れるようにサービスに徹するのが編集長の、最も重要な仕事のように思いました。

だから、編集長って、ワガママな人じゃできないんですよね。僕は周囲からワガママと思われているようで、非常に心外なんですが(笑)。でも、とにかく、編集長をやることで、自分は成長できたんだと思います。

それは、今担当されている『週刊東洋経済』の編集の仕事にも、活かされてますか。

そうですね、そうやって覚えた編集の勘所は『週刊東洋経済』本誌の仕事にも活かしていきたいです。経済誌はもうやれるテーマはやり尽くされている、なんて皮肉をよく聞きますが、まだまだたくさんありますよ! 僕は、今まで誰も見たことのないコンテンツを提示したい。企画はいくらでもある、ネタは無限にあります。たとえば、昨今では愛国思想がよく話題になっていますが、これをひとつの消費傾向としてマーケティングの観点から切り取ったら面白いのではないでしょうか。あと、アダルト業界。実はここはイノベーションが起きている業界で、市場規模も急拡大していて、今めちゃくちゃ面白い。さすがにこの企画の実現は難しいかもしれませんが……。とにかく、新しいものはいくらでもころがっており、一足先にそれらを取り上げていくメディアにしていければと思います。
 
……無限のモチベーションですね(笑)、それは、キャラクター?

自分でもよくわかりません(笑)。でも、モチベーションってすごく大事だと思います、それを持ち続けるということが。

泥だらけになって地べたを這いつくばって、馬車馬みたいに働き続けて、そんな日々を送って行くと自然とこみ上げてくる「なんでこんなに仕事に追われなければならないのか」という惨めさに耐えられるかが、この仕事の生命線だと思います。失敗して当然、怒られて当然の仕事で、挫折感はハンパない。でも、そこで力になるのが、自分がこうしたい!これって面白い!のタネをどれだけたくさん持っていられるかどうか、なんですね。それが、モチベーションを保つことになり、未来への希望につながるんです。

プロフィール

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『週刊東洋経済』編集部
『会社四季報 業界地図』編集長

西澤佑介(にしざわゆうすけ)

1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科修了、東洋経済新報社入社。記者としては主に自動車、家電メーカー、総合商社などを担当。11年度に大赤字となったパナソニックについて、当時タブーとされた会長の経営責任を厳しく追及し、反響を呼ぶ。13年『会社四季報 業界地図2014年版』編集長に就任、コンテンツ拡充につとめ前年比2割増収を達成。14年10月からは『週刊東洋経済』編集部に。企業・業界モノから、経済学まで広い分野の編集に携わる。趣味はアニメ鑑賞。

編集後記

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マ−ケティング局 宣伝部

笠間勝久(かさま かつひさ)

とにかく、もの凄いパワーを感じました。本人は「30代不足。オッサンがこんなに多い会社で仕事をするのはエライことだ」と強調していましたが、こういう人間がいる会社の未来は明るいな、と感じました。素直に希望が持てました。東洋経済のものづくりは、これからますます面白くなるかもしれません。