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本を通じて、個人や社会の「問題解決」をする

出版局 編集第二部 N.M.

突然ですが、仕事は面白いですか?

おかげさまで、楽しくやっています。
入社一年目に、当時の上司が棋士の羽生善治さんと、海洋冒険家の白石康次郎さんの『勝負師と冒険家』という本を作ったんです。実は、中学生のころから羽生さんのファンで……講演会で本を販売するというので上司についていったら、ご本人にお会いできて。それはもう、鼻血が出そうなくらい嬉しかったです。

書籍編集は、会いたい人に会える、なんて素敵な仕事なんだろうと思いました。

そこから2~3年は無我夢中で働き、そうこうしていると少しずつ自分が企画した本が売れ始めて、さらに楽しくなっていきました。
ただ、入社してからずっと楽しい、面白い、を更新し続けているかというと、正直一筋縄ではいかないな、と思うこともあります。
私は2年の育休期間を経て1年前くらいに復帰したのですが、育児と仕事では頭の使い方が全く違うんです。なので、これまでの延長線上ではなく、今の環境で編集者としてアップデートするにはどうすればいいか、試行錯誤の日々です。

今まで編集された本の中で、とくに印象に残った本はなんでしょうか?

たくさんありますが、『仕掛学:人を動かすアイディアのつくり方』は、とくに印象深い企画です。

トイレを綺麗に使ってもらうために男子トイレに的を付けるとか、ポイ捨て防止のために鳥居を設置するとか、生活者の行動を上手に誘導するアイディアについて書かれた本ですね。こんな発想があったか!と本当に面白いです。

ありがとうございます。『仕掛学』は、本の可能性を再認識した印象深い本なんです。
ビジネス書は、平たくいえば「書籍を通して個人や社会の問題解決のお手伝いをする」というのがもっとも重要な役割だと思っています。この企画は、その問題解決の手法として、「ついしたくなる」仕掛けを使って、人を無理やり動かすのではなく、楽しみながら問題解決する、という点に心惹かれました。
刊行後は、先生のもとに共同研究や、こういった問題解決ができないか?という相談がたくさん来たようで、新聞やテレビでその取り組みを実際に拝見する機会も数多くありました。
書籍を通じて研究を知ってもらい、そうして広まった仕掛学の考え方やフレームワークが社会のなかでリアルに問題解決に役立っていく。その流れの一端を担えたことをとても嬉しく思っています。

この本は、英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語にも翻訳されました。
フィリップ・コトラーという著名な経営学者のマーケティングの教科書の中で、「仕掛学」が日本人で唯一掲載されたそうなのですが、きっと彼は英語の『仕掛学』を読んで研究について知ったのだと思います。日本語で書かれたビジネス書が英語に翻訳されるのはめずらしいのですが、普遍的かつオリジナリティがあって面白いものは国や文化を越えるし、テーマによってはこんな可能性があるんだ、と感じました。

企画の発端は何だったのですか?

別の著者と雑談しているときに偶然、「面白い研究があるよ」と教えていただいたのが「仕掛学」と松村先生だったんです。
詳しく聞いてみると、「楽しみながら問題解決」、という仕掛学のコンセプトが圧倒的に面白く、オリジナリティがあり、ぜひ本にしたいと思いました。
雑談の流れでたまたま話にのぼったのですが、何がどうつながるかわからない偶然性も、この仕事の面白さだと思います。

Mさんが企画で大切にしていることは何ですか?

偶然の出会いが面白いと言いましたが、出会いをきちんと拾えるかどうか、それから自分の感性に正直であるということが大事だと思っています。

企画が生まれる動機は大きくわけると2つあります。
1つは雑談や、自分自身の悩み、興味から生まれる内発的なもの。もう1つが、世の中の動きやトレンドから売れそうなものを考える外発的なもの。
個人的には、前者の内発的動機を大切にしています。そもそも自分が面白いと思える企画でないと、踏ん張れないですよね。

たとえば、『仕掛学』は先生に書籍化を提案してから刊行まで、3年の年月がかかりました。
多少時間がかかっても、世の中の人に「仕掛学」の研究を知ってもらいたかったし、その価値があると思ったんです。なので、たとえ筆が進んでいない時でも、「東京にいらっしゃるご予定はありますか?」(※著者は大阪にいるため)と連絡を取って、どこにでも会いに行きます、というスタンスで、物理的にリマインドするという地道な活動を3年しました。

編集者は数年単位で、著者と並走することもあります。書籍編集は、地味な仕事の積み重ねなので、興味がないことはどうしても作業化してしまいます。なので、自分が心から「読みたいと思う」「知りたいと思う」内発的動機から企画を立てることは結構大事だと思っています。

なるほど。でも、自分自身の興味関心と世間の需要とが噛み合うことは難しくないですか?

その人だけの特別な悩みって案外少なくて、大体の人の興味や悩み、「解決したいこと」の多くの部分は、実は共通していると思っています。だから、自分の興味と世間の興味は結構重なるんですよ。
ただそれと、著者のやりたいこと、社会的な新規性や、時代に即しているかどうかの掛け合わせについては成功法則はないので、いつもトライ&エラーで模索しています。

東洋経済の良いところはどんなところだと思いますか?

創業1895年と100年以上続く伝統のある会社なので、著者の方からの信頼が厚いことは仕事をする上で本当にありがたいことです。
一方で、「健全なる経済社会の発展」に貢献することを志とし、ジャーナリズムが根底にある会社なので、発信する情報にはより責任がともなうことも感じています。
ただ、こういう本を作ってほしい、と上から指示されることはなく、基本的には編集者の裁量に任せてもらえるのでその点はありがたく思っています。

最後にMさんがこれから挑戦したいことや、夢はありますか?

リベラルアーツや絵本、児童書の分野に挑戦してみたいです。とくに絵本って息が長いタイトルが多いんです。30年40年売れるロングセラーもめずらしくない。情報がどんどん消費されていく時代に、長いスパンで考えたいことや、ずっと世の中に残ってほしい、普遍的な価値があるものこそ本で出す価値があると思っています。そういう時代を超えて愛される本を作っていきたいです。

プロフィール

profile

出版局 編集第二部

N.M.

神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、東洋経済新報社に入社。制作部で1年、その後は書籍編集部へ。主な担当作に『哲学100の基本』『仕掛学』『MBA100の基本』『まんがでわかる地頭力を鍛える』『27歳からのMBAグロービス流ビジネス基礎力10』『キーパーソン・マーケティング』『ドラッカーと論語』など。

編集後記

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出版局 書籍プロモーション部

M.H.

出版局は個人商店と言われますが、自分はこれを表現したい!世に広めたい!と各人各様の強い思いと世界観を持っている人が集まっていて、面白い部署だと思います。今回はMさんのその片端を覗かせていただきとても楽しいインタビューでした。
Mさんは「著者との交流の中で人生が豊かになる」とおっしゃっていましたが、私も日々それを感じます。書籍を通して様々な生き方、考え方に触れられるので、世界が広がる環境だと思います。